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福岡高等裁判所 昭和37年(ネ)837号 判決 1963年3月19日

控訴人 福岡高等検察庁検事長 熊沢孝平

右補助参加人 渡辺武若

右訴訟代理人弁護士 中山八郎

被控訴人 上原友一郎

右訴訟代理人弁護士 山中伊佐男

主文

本件控訴を却下する。

控訴費用は、補助参加人の負担とする。

事実

控訴補助参加代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、その補助参加の理由として、補助参加人は亡上原キサ子(昭和三六年八月一一日死亡)と同人の生前内縁関係にあつたのみならず、同女の遺産である長崎市稲佐町一、二五六番地の一六宅地三九坪九合九勺、同市同町一五八番家屋番号同町二丁目第四二三番の二、木造瓦葺平屋建居宅一棟建坪一三坪五合は、補助参加人において同女から贈与を受けていたので、本件離婚無効確認訴訟に関しても法律上の利害関係を有すると述べ、疏明として甲第一乃至第一五号証を援用提出し、証人田中康夫の証言を援用し、疏乙第一号証の成立を認めた。

被控訴代理人は、本件参加申出は許可しない旨の裁判を求め、補助参加人が亡上原キサ子の内縁の夫であつたことは、否認する。仮りにそうであつたとしても、姦通的内縁関係であつたにすぎないのであつて、本件訴訟について法律上の利害関係を有するものではない。更に補助参加人において前記キサ子から生前遺産の贈与を受けたとする主張事実もこれを否認する、と述べ、疏明として疏乙第一号証を援用し、疏甲第五、第六、第一〇、第一一、各号証の成立を認め、その余の疏明証拠は不知と述べた。

理由

民事訴訟法第六四条に所謂利害関係とは、専ら法律上の利害関係をいうのであつて、事実上の利害関係はこれを包含しないものと解すべきである。控訴補助参加人は被控訴人の妻であつた亡上原キサ子(昭和三六年八月一一日死亡)と内縁関係にあつたから、本件離婚無効確認訴訟について利害関係を有するというのであるが、斯様な内縁関係は事実上の利害関係にすぎず、本件訴訟の結果によつて法律上の地位に変動を招来することは考えられないところであるから、これによつて補助参加を認める理由とはならない。

更に同女の生前その遺産である宅地建物について、贈与を受けていたから、本件訴訟について利害関係を有すると主張し、当審証人田中康夫はこれにそう供述をするけれども、該証言は疏乙第一号証(原審証人としての補助参加人の供述調書)と対照してたやすく措信し難いところであつて、その他の疏明資料によつてもこれを肯認するに足らない。遺産に関する争いは、本件離婚無効確認訴訟とは別個に解決するべき問題であるから、生前贈与の事実があつたとしても、これがため本件身分関係確認訴訟について補助参加を認むべき理由とはならない。

してみれば、補助参加人の本件参加申出は不適法として許容さるべくもないのであつて、延いて補助参加人のなした本件控訴も亦不適法として却下を免かれないものといわねばならない。そこで民事訴訟法第三八三条、第八九条、第七〇条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中園原一 裁判官 厚地政信 原田一隆)

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